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2016年2月19日(金)、株式会社セミナーインフォの主催により、空港関係者や自治体の空港・観光・地方創生担当者、電鉄会社、エアライン、銀行などの関係者を対象に、東京都中央区の野村コンファレンスプラザ日本橋で「航空フォーラム2016」が開かれた。

「空港と地域の持続的な発展について」と題されたこのフォーラム、国土交通省 航空局 航空ネットワーク部 航空ネットワーク企画課長の宮澤康一氏による基調講演を皮切りに、今後の空港運営や地域と連携した取り組みの可能性について、全部で4つの講演が行われた。

【基調講演】

空港経営改革について

 国土交通省 航空局 航空ネットワーク部 航空ネットワーク企画課長 宮澤 康一 氏
まず、「空港経営改革について」と題して、国土交通省 航空局 航空ネットワーク部 航空ネットワーク企画課長 宮澤康一氏による基調講演が行われた。

最初に、宮澤氏は航空輸送の現状について説明。世界の航空旅客数は近年ほぼ一貫して増加傾向にあり、我が国の国際航空旅客需要も右肩上がりで、平成26年度では過去最多の旅客数となっていると述べた。また、国内航空旅客輸送は、東日本大震災等の影響を受けて減少傾向にあったが、平成24年度からLCC参入による需要増などにより増加。LCC旅客のうち22%が新規需要であることを示した。

次に、空港経営改革の概要について説明。地元の意見や要望に基づく地方自治体と国による空港経営改革により、地域の実情を踏まえた機動的な着陸料等の設定が可能になり、地域経済への波及や空港ビルのリニューアル、空港アクセスの向上などの効果が期待できると述べた。

民間による空港運営の事例として、オーストラリアのゴールドコースト空港を紹介した後、空港経営改革の基本コンセプトとして、安全性や利用者利便の確保の最終責任は国が負うことを説明。そこが民営化と異なると述べ、民間委託後も適正な空港運営の担保措置が行われることを述べた。

最後に、コンセッション方式の先行事例として仙台空港における取組状況を報告。東急・前田建設・豊田通商グループが優先交渉権者として選定された理由は、新規需要のターゲットと位置づけるLCC向けの施設設備、鉄道・バス事業者との連携による空港アクセスの改善、空港ターミナルビル内の商業施設や案内機能の拡充がポイントになったと述べた。また、仙台空港を例に優先交渉権選定基準の概要について説明し、具体的な計画の全体像も紹介した。

空港コンセッションを検討するに当たっての基本的視点と法律上の留意点

 アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士 寺ア 玄 氏
基調講演に続いて、「空港コンセッションを検討するに当たっての基本的視点と法律上の留意点」と題して、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士 寺ア玄氏による講演が行われた。

寺ア氏は、まず空港コンセッションについて説明。PFI法に基づくPPP手法の一つであり、独立採算型に該当していることを解説。人口20万人以上の自治体においてはPPP/PFI手法の検討が要請され、空港は特に検討対象として明示されていると述べ、前提となる法制度についても説明した。

次に、空港コンセッションを検討するための基本的な視点について説明。リスク分担と経営の自由度がキーワードであり、空港経営における運用の自由度と、リスク要素・リスク分担について解説。何を目的に空港コンセッションを行うか個別の空港で異なり、その目的を踏まえ、官民の対話と調整が必要であると述べ、ポイントは「○○が起きた場合は協議による」など「明確化」「自由化」であると説明した。

最後に、空港コンセッションを検討する際の法律上の主要な論点について解説。運営権対価の算出方法やプロフィットシェアリング、事業期間設定についての制限や考え方を説明。株式譲渡や更新投資、契約解除の事由や解除の効果についても言及した。

高松空港の路線展開と民営化について

 香川県 交流推進部 交通政策課 課長 多田 仁 氏
続いて、「高松空港の路線展開と民営化について」と題して、香川県 交流推進部 交通政策課 課長 多田仁氏が報告した。

多田氏は、まず高松空港の概要を紹介。国の管理空港(拠点空港)であり、国内線3路線、国際線3路線で2014年度は173万人と過去最高の利用数となっているが、広島空港、岡山空港など近隣空港との競争が激しいことを説明。近年では、国際線ターミナル拡張整備やLCC国内線・国際線の増便、県営駐車場の整備が行われていることを述べ、台北線を例に国際線開設の経済的波及効果についても触れた。

次に、今後の路線整備について、高松空港は国が航空輸送上重要な空港である全国13空港の一つとしており、県としても重要な広域交通インフラとして、海外展開に取り組む地元企業の支援や外国人観光客誘致の充実・強化、県産品の販路拡大などの重点施策に取り組んでいることを説明。今後の課題として、空港の基本施設、空港ビル、駐車場の経営一体化といった空港経営改革がポイントになると述べた。

最後に、空港経営改革に取り組むための、高松空港特定運営事業等基本スキーム案の独自措置について説明。民間が主体となった空港経営改革を成功に導くためには、いかに効果的な仕組みをつくるかが悩みであると述べた。路線誘致・利用促進については民営化後も地元自治体が役割を果たし、その上で多くの事業者に参加してもらい、競争原理を働かせて、より良い提案をしてもらう必要があること、空港運営全般に県が関与するのではなく、あくまでも路線誘致における協力・連携が目的であり、外郭団体にならない水準を想定していることを述べた。

地域の成長に不可欠なインフラ:空港

 株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部 経営革新コンサルティング部
 グループマネージャー 持丸 伸吾 氏
最後のプログラムとして、株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部 経営革新コンサルティング部 グループマネージャー 持丸伸吾氏が、「地域の成長に不可欠なインフラ:空港」と題して講演した。

持丸氏は、まず訪日外国人数の増加に伴い、インバウンド消費の成長は当面続くと指摘。現状では、インバウンド消費は大都市圏に集中しているが、まだまだ伸びしろがあり、「空港」を通じて地方へ波及させられると述べた。

また、外国人出国者数を見ると、成田、関西、羽田、中部、福岡、新千歳、那覇の上位7空港で9割以上を占めていると説明。地方の空港によっては国際線の利用者数が減少しているところもあり、構造変化が起きていると指摘。特に、国際線利用者数で福岡空港が中部空港に迫っていることや、富士山静岡空港の伸びが突出していることを示した。

次に、英国の空港について言及。1990年から2013年までの航空旅客数の伸び率上位5空港は、民営化によって様々な工夫や経営改善を行っていると説明。ブリストル空港など具体的な成功事例を紹介し、失敗例にも触れた。

最後に、今後の取り組みに向けた視点を紹介。地域の成長源であるインバウンド増加のためには、市町村や観光地といった単位での魅力作りとともに、「空港」という拠点を核にした広域的なインバウンド戦略、成長産業育成がカギになると述べ、インバウンドとは「観光」だけではなく、地域の活力そのものだと述べた。

また、今後は「インフラ整備・維持管理は国」という考えを改め、地域自ら主体となって空港というインフラに投資を行い、魅力を高めていくことが重要であると提言。富士山静岡空港や茨城空港のような取り組みを行い、空港を地域の核として活用するための一体運営により、成長市場に取り組んでいくことが大切であると述べた。
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